alt=

  

研修医の過労問題

1998年に関西医科大学の研修医の過労死をきっかけに、研修医が労働者であることが認められ、労働基準監督署が同大に対して研修医を労働者として扱うように是正勧告を行いました。しかし、その後も研修医の過労死がなくなることはありませんでした。

医師が労働者であるという判断は、社会に一定のインパクトを与えましたが、医師の労働にも労働基準法が守られるのは当然であるという意識は、社会にも医師にも広がることはありませんでした。医療政策廃止の過重労働を前提に策定され続け、このことが問題視されることも無かったのです。

そのため、ア多々なる犠牲者が生まれ、中原裁判など過労死した医師の家族たちは闘いを続きました。また、医療現場では限界を感じて希望を持てなくなった医師たちが過酷な現場を去る「立ち去り型サボタージュ」の現象が起こり、医療崩壊が始まったといえます。

  


脳循環・代謝改善薬について

脳の神経細胞の代謝促進によって、精神的機能を改善する薬が脳循環・代謝改善薬です。脳梗塞やくも膜下出血、頭部外傷の後遺症、脳血管障害の急性期、肝障害や尿毒症などによる脳症など、広い適応を有しています。

血液流の増加なども必要なため、脳循環・代謝改善薬には血栓溶解薬や抗凝固薬、抗血小板薬も含まれます。脳循環改善薬の代表的なものとしてはイフェンプロジル、ニセルゴリンなどが挙げられます。副作用としては食欲不振、口の乾き、肝障害などがあります。頭蓋内出血発症後、止血が完成していない患者には禁忌となっています。

脳卒中や症状のない脳梗塞などを早期に発見する脳ドックが注目されています。東京の脳ドックには最新のCTやMRIが備わっている医療機関が多く存在しています。40代で喫煙歴が長い方、糖尿病の方、家族に脳血管障害になった方がいる場合、一度病院で検査を受けることをお勧めします。

  


銚子市立総合病院の破綻の背景

私立病院だけではなく、公立病院も潰れる時代になりました。2008年、千葉県の銚子市立総合病院が経営破たんをしましたが、その原因は医師不足などの理由で患者数が減って、病院経営が赤字となり、市の支援も受けられなくなったためです。当時の市長は、大学病院から医師の派遣を受けることが極めて困難になったことを理由に挙げています。

医師が派遣されなくなった理由は2つあります。まず、医師臨床研修制度が改正され、研修医が自分で研修先の病院を選べるようになりました。その結果、医療環境が整った手術回数の多い臨床研修病院でスキルを磨こうと考える研修医が増え、大都市の病院や著名な指導医がいるところに応募が集中するようになったことです。

また時を同じくして、行政改革の一環として、国公立病院も私立病院と同じように独立採算制とすることが決定し、国立の大学病院も独立行政法人となりました。そのため大学病院は病院経営を黒字化させようと、他の医療機関へ研修医を出さず、自分の病院で囲い込む傾向が強くなりました。

さらに、収益を確保するため、入院費の高い短期入院患者を中心に入院させて、ベッドの稼働率を上げる戦略をとりました。手術のできる外科医、手術に欠かせない麻酔科医、術後のケアができる内科医を中心に、研修医を引き上げるようになったのです。

このように、地方の病院に医師が派遣されなくなり、医師のいなくなった銚子市立総合病院は、診療科目が減り、助成金がもらえる一定の基準をクリアできなくなり、国からの助成を打ち切られました。診療科目が減った病院には、患者が集まらなくなり、ついに経営破たんに至ったのです。

近年は病院の経営が大変なだけではなく、医師の科目別の偏在化が進んでいるため、小児科や産科など人手不足の科で働く勤務医も大変です。過労死レベルの勤務時間、患者意識の変化による医療訴訟の増加、開業医に比べて安すぎる給与、モンスターペイシャントの問題などで、病院を去ってしまう勤務医が増加しています。

なお、同病院は、医療法人財団銚子市立病院再生機構を指定管理者として、2010年5月から外来の診療を再開しています。

  


コレラ菌やO-157など、感性性の下痢に注意

感染性の下痢は、主に細菌がつくり出すさまざまな毒素によって発生します。腸管に作用する細菌性毒素のことをエンテロトキシン(腸管毒素)といいます。

下痢だけならば水分の補給と安静にしていれば大丈夫ですが、腸管の感染症でもっと重篤な症状となって死に至ることもあります。コレラ菌に感染すると、これら毒素によって腸管の細胞から大量の水分が漏れ出し、知識的な下痢を引き起こします。また、O-157などの腸管出血性大腸菌が出すベロ毒素は、宿主細胞のタンパク質合成を阻害して、細胞を死滅させてしまいます。

一方、腸管内には、ビフィズス菌や大腸菌をはじめとした、非常に多くの種類の微生物が存在しています。これらの細菌は、生体が栄養を吸収しやすくなるような働きのほかにも、外から入ってきた病原性の微生物が腸内に住み着かないようにする役目も担っています。

しかし、抗菌薬の投与などによって腸内細菌叢が崩れると、外部から進入した細菌がその隙間を埋めて増殖してしまいます。抗菌薬などの投与には、こうした点も注意が必要です。下痢は、体重減少、発汗、排尿時の痛みなどと合わせて現れることもあります。パートナーとの生活で心当たりのある方は、女性の場合は婦人科で、男性の場合は泌尿科や性病科で検査を受けるようにしましょう。

  


薬理学のお勉強:外用薬の分類

筋肉痛の時にお世話になる貼り薬、目のかゆみや眼病を治療する際に使用される点眼薬など、局所での作用を目的に使用される薬を「外用薬」です。

貼付薬はガーゼや布などに薬効成分を含ませ、皮膚に直接張って使用します。薬の成分がゆっくりと吸収されるので、作用時間が長いというメリットがありますが、長時間張りすぎると、皮膚への通気が阻害されて、貼った部分が爛れたり、痒くなったりするのがデメリットです。

このため、通気性が良い材質が使われています。また、皮膚から直接吸収されるので、薬の成分は脂溶性のものが多くなっています。筋肉の炎症を抑えるなど、局所作用を目的としたものの他に、呼吸器疾患の治療のためのような、全身作用を目的に下野もあります。

塗布薬は皮膚に直接塗りこめるように作られたもので、ワセリンなどの油性の基剤に成分を塗りこんだ軟膏剤およびクリーム剤、水溶性の基剤に成分を溶かしこんだローション剤などがあります。難航剤やクリーム剤は、患部が爛れていたり湿潤している場合に用いられ、ローション剤は、患部が乾燥しているときに使用されます。

このほか、口腔用剤や座薬、膣座薬も外用薬です。口腔用剤のトローチ錠は、なめて溶かした成分を口腔粘膜から吸収させます。また座薬や、女性の膣に使用する膣座薬は、直接粘膜や膣粘膜から吸収されるようになっています。